2014/06/26

Blue Ever Blue Mercury Model 878。後編

前記事のように自分の好みに合う中価格帯のイヤホンを探し、現在はゼンハイザーのIE60に落ち着いていたイヤホンスパイラル。
やっぱりある程度価格が高いものはそれなりの開発費をかけて、新技術を開発し、商品に落とし込んで、発売にこぎつけているわけだから、基本的に音はいい。あとはその音が自分の好みの音に合うかどうか。

そんな中で、今回たまたま面白いイヤホンの発売とタイミングが合ったもので、全モデルに前々から非常に興味を持っていたこともあり、今回購入に至ったのがタイトルのBlue Ever Blue Mercury Model 878だ。
今回は米Blue Ever Blue社の輸入総販売元HAKOJIRO SOUND BOXでの予約購入を行ったので、一般発売日の6/27より5日も早く、手元に届いた。

さてこのBlue Ever Blue社の特徴からまずご紹介する。
Blue Ever Blue社は米国のTBI Audio System LLCが開発したHDSSという高音質化技術をイヤホンに搭載するために設立された会社で、過去に868B "the silver"という低価格でありながら、高解像度と音の響きを両立させた名機をはじめとするコストパフォーマンスに優れたイヤホンを発売してきた実績がある。ただ日本では未だ知名度が驚異的に低い。まぁ日本ではSONYやオーディオテクニカみたいな世界的音響機器メーカーが多数いるので、なかなかそこに割って入ってくるのは難しいんだろう。ちなみにHDSS技術に関しては下記が詳しい。
http://www.hakojiro.com/HDSS.html

とにかくそのBlue Ever Blue社が新たに開発し投入されたのが件のMercury Model 878だ。HDSS技術に加え、ドライバの改良を行うことでより中高音の表現力が増したという触れ込みで6/27いよいよ日本発売となる。

ではその音はどうか。

まず低音に関して、ここで思ったより驚いたのが音がBA型ドライバの響きに似ている。音の解像度が高く、とてもよく締まっていて、そしてよく響く。ダイナミック型であればもっとボワついているはずなのに、この機の低音は私が低音ですと言わんばかりにタイトに主張して、そしていつの間にか消えていくそんな音。

次に中音のボーカル。少し奥まってはいるものの響きや音の分離がよく、前述の低音に覆われることのないクリアな音を保っている。歌声にメリハリがあり、表情も豊か。男性ボーカルも女性ボーカルもそつなくこなし、また歌声にも艶がある。

高音は上限のない響き方で、どこまでも響いていく。HDSSの効果かカナル型イヤホン独特の密閉感を感じにくいので、オープン型のような響き方で、そして全く刺さらない。ATH-CKM99なんかはチタンとステンレスの筐体のせいで曲によっては耳につくような響き方だったが、878Bは筐体がアルミにもかかわらず、高音が丸い。人によっては多少物足りないかもしれないが、確かに聞き疲れしない。

総合的な音の印象は前述のようにHDSSの効果のため、カナル型の密閉感や閉塞感をほとんど感じないので、装着してイヤーピースがなじんでくるとほとんど何も付けていないような感覚になり、それで音楽を聴くとまるでスピーカーの前で音楽を聞いているような感じになる。また音の立体感も素晴らしく、どの位置で何の音が鳴っているか、奥なのか手前なのかもはっきりとわかる。


ただ、この機種、HDSSの仕組みのせいで、イヤーピースとの相性が他のイヤホンに比べて非常にシビアになっている。HDSSの説明を読んで、実際に装着して、おそらくHDSSは装着時の耳の内圧を一定の圧力に調整する仕組みが内蔵されているんじゃないかと感じた。この878Bを装着した瞬間はかなり密閉感があり、イヤーピースが吸盤のように耳に張り付く。そこから徐々に圧力が下がり、ちょうどいいところでキープされる。ということはイヤーピースによってはその最初の圧力が確定されないとうまくHDSSの効果が現れてこない。また装着感が合わず調整をしようとイヤホンを触ると内圧がぶれて、左右の音の出方のバランスがずれる。そんなときは一旦耳から外して、もっかいリセットしてから再度装着することで、ちょうどいい位置を探さないといけない。これが最初はなかなか慣れず、苦労する。

もちろんそれだけイヤーピースとの相性がシビアだと出る音もイヤーピースによって大きく違う。純正のもののほか、ネット上で評判がいいJVCのスパイラルドットやオーテクのSOLID BASSのものを試してみたがスパイラルドットは音の解像度が増し、低中高音のバランスがとれた音、SOLID BASSは中高音が引っ込み、低音重視で迫力のある音という具合に。個人的には装着感や音の出方を考慮してSOLID BASSのLサイズをメインに使用している。

といってもまだ購入後3日しか経っていなく、しかもメーカーが時間がかかるとわざわざ注意書きを入れるほどエージングに時間がかかるということなので、とりあえず第一印象はこのぐらいにしておく。

総合的な評価として、この機種は買うべきか買わざるべきかとなると、自身にとてもお気に入りで一切文句のないマイスタンダードイヤホンがあればわざわざ買う必要はない。ただ、どこか一つでも、とくにカナル型の密閉感や音の出方に不満があるとすれば、ぜひ一度は試して欲しい。上記のHDSSの調整をうまいこと出来るようになれば、878Bはマイスタンダードイヤホンの一つにきっとなるはずなので。

2014/06/22

Blue Ever Blue Mercury Model 878。前編

個人的にイヤホンにはとてもこだわりを持っている。
朝と夜の通勤時間の1時間が自分にとっての何よりの自由な時間であり、自分だけのスペースで自分の好きな音楽を心置きなく楽しめる時間だからだ。

これまで色々なイヤホンを購入、試聴してきて、ある程度自分の好きな音、好きな装着感、注目すべき点などを自分の中で持って、今現在にいたる。

まず好きな音、音の解像度が高く、音場が広く、鳴る定位置がしっかりと見えること。
好きな装着感、完全遮音ではなく、ある程度の開放性と音の広がり、そしてタッチノイズが少ないもの。
その他には低音のさらの下の重低音の有無、高音の余韻、低中高音のバランス。
そして価格。
価格に関して言えば、昨今の高級イヤホン人気に相まって上は10万円越えのイヤホンも幾つか登場し、そりゃ高いものはいいに決まっているので、ある程度上限を定めないと収拾がつかなくなるので、個人的には5,000円から20,000円までがイヤホンの適正価格内だと自分の中では決めている。イヤホンは基本外で使うものだし、家で聞くのならヘッドホンやスピーカーのほうがいいに決まっているし、外で聞くのならいずれ断線や故障をするし、所詮イヤホンは消耗品であると思う。

その辺を重視して、これまで幾つかのイヤホンを試聴してきたので、印象をざっくりと。

SONY EX510SL
長らくメインで使用していた愛機。u字ケーブルの使いやすさと開放的な中高音が持ち味。遮音性は低いが外の音が聞こえるので通勤時にも社内での仕事中でも使用していた。

SONY XB90EX
510SLの低音のなさに物足りなさを感じ、次に使用。低音重視のXBシリーズでありながら、16mmの大口径ドライバにより、繊細な中音と高音が出、音楽が楽しく聞けるイヤホン。Y字ケーブルながら丈夫な作りで、通勤時に大活躍。

SHURE SE215 SPE-A
デザインと美しい色、巷の評判を参考に購入。低音寄りのチューニングと遮音性からくる音の籠もりにより、すぐに売却。

FOSTEX TE-05
低中高音の音のバランスが抜群。メリハリもあり、音の広がりもある。1ドライバで勝負しているのもいさぎよい。ただオープン型のように遮音性が皆無で、電車で使用は出来ない。

SONY MDR-EX650
前述のEX510SLの後継機の発売とタイミングがあったので、購入。価格も手頃。音は若干低音寄りなものの真鍮製の筐体により、高音の響きもよく、デザイン、ケーブルの質も申し分ない。ただ後述のATH-CKM99に比べ、音が一カ所から広がっている印象を持ち、音の分離も悪い。そのへんは価格分の鳴り方。

MONSTER DNA IN-EAR/SOL REPUBRIC AMPS HD
アメリカ製クラブ向け低音イヤホン。低音に中高音が負け、音の解像度も低い。ケーブルや筐体の作りも大柄で、アメリカ製らしいアメリカ人の好きそうな音と筐体。聞く曲を選ぶイヤホン。

RHA MA750
作りはよく、剛性も高い。音もダイナミック型のよさを存分に発揮し、音はフラット、3年保証もついてコストパフォーマンスは高い。ただイヤーハンガーが固定できず、歩くたびに浮く、イヤホンプラグがごつく、持ち歩きには不向き。手作り製のためかプラグに曲がりがあり、DAPと接触不良を起こしやすい。音はいいのに残念。

Astrotec AX-35
高評価のAstrotec AX-60の廉価版。流行のハイブリッド型イヤホンでありながら、BA型とダイナミック型の音の繋がりも自然で、ハイブリッド型の欠点を感じさせない音。ただ、重低音の音がなく、下は低音止まりで迫力に欠ける。ダイナミック型を改良すればもっとよくなるはず。

audio technica ATH-CKM99
チタンとステンレスの金属筐体で、音の分離が素晴らしく、高音の響き方が美しい。低音重低音も申し分なく、音のメリハリもあり、聞くだけで他のイヤホンよりも高いというのがわかる。前述のMDR-EX650と聞き比べると音の出る位置がばらけて、よりリアルに音楽が鳴る。

SONY XBA-H1
AX-35と同じく、BA型とダイナミック型のハイブリッドイヤホン。AX-35に比べ、低音と高音の出方、響き方に差異があり、中高音のボーカルが際立って聞こえる。重低音も包み込むように響き、ケーブルの質も絡まりにくく、剛性も高い。現在のサブ機。

Victor HA-FXZ200
ダイナミック型を3機載せるという正気とは思えない設計のイヤホン。ただ音のバランスが素晴らしく、重低音から高音まで美しい音を奏でる。音楽を聴くとまるでリスニングルームでスピーカーから音を聞いているような印象。ただ筐体デザインがダサイので、家聞き専用。

ゼンハイザー IE60
現在の使用機。ダイナミック型らしい迫力ある低音重低音、際立つ中音のボーカル、プラスチック製とは思えない響きの豊かな高音。タッチノイズの少ないSHURE 掛け。高級感のあるエレガントな筐体デザイン。どこをとっても申し分ない名機。

という感じ。
長くなったので、タイトルのBlue Ever Blue Mercury Model 878レビューは後編へ。